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富士桜法律事務所

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ETN-JDR(VIXベアETNなど)

新しい商品による被害

証券被害の背後には,常に,その時代の流れがあります。これまでは,新規性のある複雑な商品の筆頭といれば,仕組債やデリバティブなどでしたが,時代の流れとともに,また,新たな商品による被害が発生しています。

海外で発行された「外国指標連動証券(外国債券)」を「受益証券発行信託」という仕組みを使い,「信託受益証券」として証券化した商品があります。このような手法は,「JDR」(Japanese Depositary Receipt,日本型預託証券)と呼ばれ,海外の有価証券を日本において上場する際に用いられる手法です。日本における歴史は浅く,東京証券取引所が,「外国指標連動債券(ETN)を受託有価証券とするJDR」(「ETN-JDR」とか「ETN/JDR」とも呼ばれます)の上場制度を整備したのは,平成23年4月になってからのようです。この証券化を駆使した手法が用いられることにより,語弊を恐れずいえば,これまでは投資できなかったような海外の複雑な金融商品が日本国内で上場され,上場株式と同じように,簡単に取引できるようになりました。

VIXベアETNによる損害発生

以上のような手法で組成され,日本国内で販売されていたある商品が,一晩にして96%も価格が下落し,早期償還・上場廃止になった,との報道を目にし,そのころから,この商品に関する相談を多く受けるようになりました。その商品は,「NEXT NOTE S&P500 VIX インバースETN」(2049)という商品です。「VIXベアETN」とか「VIXベア」とも呼ばれています(以下「VIXベアETN」といいます。)。

なぜ価格が急落したのか

「VIXベアETN」が一晩で96%も価格が下落したのは,決して偶然ではありません。あくまで,「VIXベアETN」の仕組み・構造に由来する「内在」したリスクが現実化したに過ぎません。 「なぜ価格が急落したのか?」については,大きく分けて,「ボラティリティの性質」と,「ベア型・インバース型であったこと」と,「早期償還条項が付されていたこと」の3つに理由があります。ただ,実際に被害回復へ向けた取り組みを進めている最中であるため,この場で,私の分析を示して手の内を明らかにすることはできませんので,詳細は,個別に,お問い合わせ下さい。

VIXベアETNによる被害回復へ向けた取り組み

多くの相談をいただき,現在,「VIXベアETN」により生じた損害の回復へ向けた取り組みを進めています。「VIXベアETN」は,東京証券取引所に上場された商品です。しかし,価格が対象指数に連動する商品という意味合いでは「仕組債」に通ずる部分がありますし,ボラティリティの影響をダイレクトに受けるという意味では「オプション取引」と共通する部分が多くありますし,証券化商品であるという点は「CDOエクイティ」が想起されます。商品構造や内在するリスクは,顧客にとって単純ではないことはもちろんですが,被害回復に取り組む者にとっても,決して,単純なものではありません。分析的視点を欠いたまま「リスクが高い」とか「説明を受けていない」とか「錯誤である」と主張するような,単純な取り組みではなく,以上のような商品特性を十分に理解・分析し,その上で,実効的な主張立証により被害回復に取り組む必要があると考えています。

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