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富士桜法律事務所

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仮想通貨

仮想通貨とは

仮想通貨とは,インターネット上で自由にやりとりされ,通貨のような機能を持つ電子データのことをいいます(政府広報)。

「資金決済に関する法律」(資金決済法)において,仮想通貨は,「物品を購入し,若しくは借り受け,又は役務の提供を受ける場合に,これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ,かつ,不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り,本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって,電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」(一号仮想通貨),ないし,「不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって,電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」(二号仮想通貨)と定義されています。

仮想通貨の中で,最もポピュラーなのが,ビットコインです。ビットコインは,ブロックチェーンと呼ばれる「ピア・トゥ・ピア」(P2P)型のコンピュータ・ネットワークを利用した仮想通貨で,Satoshi Nakamotoと名乗る人物が2008年に公表し,2009年に運用が開始された仮想通貨です。ブロックチェーンと呼ばれるインターネット上の取引記録台帳上でのみ移転が可能で,特定の発行者も管理者も存在せず,ビットコインの取引は全て履歴が記録・公開されている仮想通貨です。

仮想通貨に関する法制度

「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」が成立し(平成29年4月1日施行),「資金決済に関する法律」(資金決済法)に「第三章の二 仮想通貨」が追加されました。これにより,仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換等を業として行う場合には仮想通貨交換業の登録が必要となり,併せて,利用者保護のために,利用者に対する情報提供,システムの安全管理,利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理なども規定されました。

また,「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯罪収益移転防止法)も,仮想通貨に関して,マネーロンダリングやテロ資金供与対策として,本人確認義務,本人確認記録・取引記録の作成保存,疑わしい取引に係る当局への届出などについて定めています。

仮想通貨をめぐる紛争

仮想通貨については,ビットコインの交換所であった株式会社MTGOXがシステムのバグを悪用した不正アクセスを受けビットコインが消失したことを原因として破産した事件が,一時期,世間の耳目を集めました。しかし,仮想通貨の知名度が一気に高まったのは,「仮想通貨バブル」により1億円以上の利益を得ることに成功した「億り人」が話題になり,他方で,クラッキングによる仮想通貨大量流出事件が起った,ここ1,2年です。

知名度が上がり,仮想通貨が一般化するのと比例して,仮想通貨に関する紛争も増え,相談を受けることも多くなりました。仮想通貨に関する紛争を大別すれば,

  • (1)投資詐欺の投資対象として仮想通貨が出てくる事案
  • (2)投資詐欺における支払いを仮想通貨で行っている事案
  • (3)第三者のクラッキングにより仮想通貨が消失した事案
  • (4)強制執行の対象として仮想通貨が出てくる事案

があるように思います(完全なる私見です。)。

(1)投資詐欺の投資対象として仮想通貨が出てくる事案

投資詐欺の投資対象として仮想通貨が,近時,出てきたのは,投資詐欺の『巧妙化』・『国際化』・『多様化』の結果であるように思います。仮想通貨バブルにより「利益が得られるかも」と思わせる時流の中で,仮想通貨は目に見えず,裏付けとなる資産もありませんので,「詐欺じゃない。値上がりしなかっただけだ。」という弁明がし易いため,投資詐欺の対象としては,非常に,用い易いのだと思われます。相談を受け,被害回復へ向けた活動を行い,勝訴していますが,詐欺であることの立証は容易ではありません。

(2)投資詐欺における支払いを仮想通貨で行っている事案

投資詐欺の決済手段として仮想通貨が用いられることが,近時,出てきたのも,投資詐欺の『巧妙化』の結果であるように思います。規制が厳しくなったため銀行口座は使えない,現金手渡しも原始的でありながら現行犯逮捕の危険性が伴う,そのような状況で,仮想通貨は,詐欺の手段としては,非常に,用い易いのだと思われます。

(3)第三者のクラッキングにより仮想通貨が消失した事案

今後,多く発生するのは,第三者のクラッキングにより仮想通貨が消失する事案であるように思います。仮想通貨大量流出事件として大々的に報じられた某社のみならず,大手の仮想通貨交換業者についても,第三者のクラッキングにより仮想通貨が消失した,という相談を受けるに至っています。おそらく,この類型に関する前例(裁判例)もないと思われます。どのような手段で,どのような切り口で,どのように被害回復をしてゆくかは,腕の見せ所といえます。

(4)強制執行の対象として仮想通貨が出てくる事案

そして,現在,私が,最も取り組んでいるのが,仮想通貨に対する強制執行です。既に何度かトライし,前例のない差押決定を受ける等の成果もあげていますが,とはいえ,まだまだ不十分であるといえます。2018年6月14日の日本経済新聞に「仮想通貨 強制執行に壁」との記事が出たとおり,まさに,民事執行法の限界に挑む取り組みともいえます。「法改正が必要なのではないか」,「いや,現行法でも対応可能な筈だ」,「最終的には強制執行妨害罪を駆使しなくてはならないのではないか」など,日々,悩みながら研究・検討を重ねています。

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